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リレーエッセイ 2024・春
北海道産昆布の多様性 1/2
こんぶの違いを舌で楽しむ

昆布販売の専門店では、さらに多様な商品が見られます。近年では、分子情報を加えたコンブ分類の再検討が行われていますが、水産の現場においては、概ね古くからの扱いが続けられています。コンブの主産地北海道において流通している“こんぶ”は以下の通りです。

・まこんぶ(マコンブ)
・ややんこんぶ(室蘭産の一年目マコンブ)
・ほそめコンブ(ホソメコンブ)
・りしりこんぶ(リシリコンブ)
・りしり系えながおにこんぶ(羅臼産のオニコンブ)
・くきながこんぶ(りしり系えながおにこんぶではなく、茎が長い特徴を持ったおにこんぶ)
【根室産では、二年目の秋に採取するものを“くきなが”、三年目の7月中旬以前に採取したものを“春くきなが”、三年目の7月中旬以降に採取したものを“大あつば”という】 ・おにこんぶ(上記2つに該当しないオニコンブ)
・みついしこんぶ(ミツイシコンブ)
・ながこんぶ(ナガコンブ)
【通常の採取期間前に採取した二年目のものは“さおまえこんぶ”という】 ・あつばこんぶ(アツバコンブ)
【貝殻島で採取した二年目のものは“さおまえこんぶ”という】 ・みすじこんぶ(アツバスジコンブ)
・とろろこんぶ(トロロコンブ)
・がごめこんぶ(ガゴメコンブ)
・ねこあしこんぶ(ネコアシコンブ)
・ちぢみこんぶ(チヂミコンブ)

これらこんぶは次のように仕立て・区分され(図3)、それぞれ異なった取り扱いになります。

長切(ナガキリ):乾燥した後、一定の長さに切ったもの
元揃(モトゾロイ):伸展して乾燥した後、葉元を三日月形に整形したもの
折(オリ):伸展して乾燥した後、一定の長さに折りたたんだもの
棒(ボウ):乾燥した後、一定の長さに切って長さを揃えたもの
切葉(キリハ):伸展して乾燥した後、適宜の長さに切ったもの
頭(カシラ):乾燥したこんぶであり、根本(茎を含む)部分
加工用:乾燥したこんぶであり、上記以外

図1. 支柱式ノリ柵における干出中のノリ網。
図2. 浮上筏を使ったノリ網の干出。
図3 まこんぶの仕立て作業(左)と選葉作業(右)

製品化において、種類によっては産地の違いで扱いが変わるほか、天然か養殖かでも区別され、さらに前者は漁獲される時期で(漁期内の早い時期(走)か遅い時期(後)か)、後者は一年養殖(促成)か二年養殖(養殖)かでも別けられます。また、天然物では、打ち上げられたもの(拾)や、一年目のもの(水)も区別されています。このほかにも、荒葉や傷葉、赤葉などさまざま扱いが決まっているのです。

それぞれの乾燥こんぶは生産者によって決まったサイズに整えられ、色沢のほか、葉面に現れる斑点や結晶の有無、傷や穴、付着物の痕跡などによって等級別けされます。例えば、まこんぶの元揃については、① 促成養殖物を除いたものとして、(1) 元揃(走)、(2) ま元揃(後)、(3) ま元揃(養殖)がありますが、“函館市古部町から岩戸町及び鹿部町産のもの”と、“函館市釜谷町から銚子町及び森町産のもの”はそれぞれ違った基準で1等から3等に別けられます。一方、② 促成養殖物としては、(4) ま元揃(促成)があり、これも1等から3等に別けられています。

図4 結束されたまこんぶ製品
図4 結束されたまこんぶ製品

このように基準に合わせて選別された製品は、品目や等級別に色バンドを用いて結束されますが(図4)、その方法や量目もこんぶによって異なります。例えば、りしりこんぶの長切はダンボール板で覆い、バンドで横二回り3箇所及び縦一回り1箇所を掛けて15 kgの束にするのに対し、おにこんぶの長切はダンボール板で覆い、バンドで横二回り4箇所及び縦一回り1箇所を掛けて20 kgの束にしているのです。

シーズンになると生産者は寝る間を惜しんで製品作りを行い、精魂込めて作られた製品は協会による検査を受けたのち、私たちが購入する商品へと姿を変えます。価格は銘柄や浜格差も考慮して決められますが、消費者である皆さんはどれほど違いを意識して昆布を使い別けているでしょうか。せっかく多様なコンブの故郷日本で暮らしているのですから、それぞれの違いを舌で楽しんでみませんか。

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執筆者

四ツ倉 典滋(よつくら・のりしげ)

北海道大学教授、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター忍路臨海実験所所長、
NPO法人北海道こんぶ研究会理事長、昆布の栄養機能研究会理事、水産学博士

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