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フォトギャラリー 季節の話題
2011.9.25
vol.1 9月14日に佐賀県有明海漁業協同組合(県漁協)七浦培養事業所を訪問しました。
佐賀県有明海漁業協同組合(県漁協)七浦培養事業所

カキ殻糸状体を特別に引き上げて見せてもらいました。熟練した作業員さん達の動きは実にきびきびとしています。

黒々と熟成したカキ殻糸状体

黒々と熟成したカキ殻糸状体

七浦培養事業所施設内全景

七浦培養事業所施設内全景

【この原稿は9月25日に執筆されたものです。海苔漁期の推移に係る最新情報は別途ご確認下さい】

今年も海苔漁期が始まりました。といっても採苗が始まったところで、これから育苗、冷凍(または冷蔵)網入庫、秋芽網(年内生産網)単張りといった経過を経て、海苔の摘採(収穫、生産)が始まるのは早くても10月の下旬になります(海苔養殖の基本的な事柄については藤井弘治著「産地を追って(第1回)」を、用語については統計情報の注釈をご参照下さい)。

海苔ジャーナル紙の取材情報と本会が開催又は出席した各県研究機関、漁協系統組織の会議での情報によれば、宮城、千葉は既に陸上採苗を開始し一部は終了、愛知、三重も陸上採苗のピークに入っています。瀬戸内地区各県も陸上採苗ですが、開始時期は各県の海況によりそれぞれ異なります。これに対して野外採苗を行う九州有明海の福岡、佐賀、熊本の3県は、10月13日以降に各県判断で採苗を行う事を取り決めています。

陸上と野外のそれぞれの方法は「産地を追って」に詳しく書かれているのでそれでご理解戴くとしても、用語としては「陸上」と「野外」では対になりません。これは元々「陸上採苗」は室内の施設で行われていたため「室内採苗」と「野外採苗」という用語が生まれ、その室内が陸上の野外で行われるようになったので「陸上採苗」という用語になった訳です。

このことに限らず海苔養殖業では、植物である海藻を対象とするため「収獲」ではなく「収穫」であり、「採苗・育苗」、「摘採」等漁業というよりは、あたかも農産物を扱う様な用語が使われています。漁業自体にも「栽培漁業」という言葉がありますが、そもそも「海苔養殖業ではなく海苔栽培業だ」と唱える人達もいます。

「対」といえばもう一つ、海苔養殖は寒風吹き荒ぶ中でというのが一般的なイメージでありそれは間違ってはいないのですが、採苗やそれに先立つ支柱の建込みや浮流しセットの設置は、8月の後半から半袖で大汗をかきながら行われます。海苔生産者が休みを取れるのは6月、7月の2カ月位のもので、準備と後片付けを含めると10カ月は働き通しということになります。

本題に戻ると、かつては(実際に見聞きした30年程の期間についてですが)宮城と千葉が全国に先駆けて9月15日頃から採苗を開始し、九州有明3県も10月1日か2日には先を争う様に採苗を開始しましたが、現在は採苗の開始がだいぶ遅くなりました。これは水温降下の遅れによるもので、温暖化の影響を実感するとともに、実際、生産開始の遅れによる漁期短縮、生産水準の低下という悪影響が出ています。

新培養場建設現場

新種苗培養施設建設現場

打ち合わせ中の漁協幹部

工事関係者と打ち合わせする田上卓治参事(中央)

さて、前置きが長くなりましたが、トップページの写真を順次追加して参ります。7月25日のリニューアル時点では、過去の資産として本会が撮影した写真を2枚、お二人の本会協力者が撮影した写真をそれぞれ1枚、計4枚の写真を掲載しましたが、今後は本会が直接撮影したものか、各県研究機関、各県漁業協同組合連合会及び有志から提供戴く写真で、各産地の様子をお知らせしたいと思います。

また、不定期ですが「季節の話題(風景・情景)」として、それぞれの専門家の記事とは別の視点で、広く日本の国民の皆様に我が国の海苔養殖業の実情をご紹介するという観点で、その時々の様子をお知らしたいと思います。

今回は去る9月14日に佐賀県有明海漁業協同組合(佐賀有明地区全体を統括する漁協でいわゆる県漁協)の草場淳吉代表理事組合長と江口浩介専務理事をお訪ねした際に、そのご好意で、わざわざ田上卓治参事に同行願い訪問させて戴いた同漁協七浦培養事業所のカキ殻糸状体(ノリ種苗)の様子を掲載しました。同事業所を管轄する岩永芳幸同漁協指導部種苗課長の説明によると、同事業所の培養能力はカキ殻糸状体200万枚で、概ね同県の1/3の需要をまかなっているとのことでした。写真のカキ殻糸状体は概ね1年をかけて生育したもので、熟練した作業員さん達により、採苗に向けての最後の熟成作業が行われていましたが、特別にカキ殻糸状体を引き上げて写真を撮らせてもらいました。見事に黒々と熟成しています。漁期の成果を祈るばかりです。海苔産業に限らず我が国の産業はすべてそうですが、直接の生産者だけでなく、こうした下支えがあって初めて海苔が生産できる訳です。

なお、同漁協は今後の生産のための設備投資にも熱心であり、現在新しい種苗培養施設を建設しています。田上参事の案内で来春2月に竣工の建設現場を見学させてもらいましたが、主産地の熱意をひしひしと感じさせる情景であり、我が国の各産地ともそうあって欲しいと願わずにはいられませんでした。

平成23年9月25日 財団法人海苔増殖振興会

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